2013年12月22日

狼王ロボ

『狼王ロボ』(Lobo, the King of Currumpaw)はシートン動物記の最初の作品であり、日本では子供向け文学として有名。原作は1896年にアメリカ合衆国で発表された。
子供向けの作品に、大人を感動させるような深い精神性が込められていることはしばしばあるが、この作品の精神性は開拓時代が終了して間もないアメリカ人の心に響き、アメリカにおける人と自然との関り方に影響を与えた。

この作品は創作という説もあるが、主人公である狼王ロボの毛皮やシートンが狼王ロボを捕らえたときの写真が残されているので、ほぼ実話とみなすべきだろう。

ロボは高い知能と運動能力を兼ね備えたオオカミで、アメリカ・ニューメキシコで多大な畜産被害をもたらしていたために、現地の人たちから悪魔のように恐れられていた。そこにオオカミ退治に熟練したシートンが招かれ、智恵の限りを尽くした戦いが繰り広げられる。

シートンの罠はことごとく見破られ、屈強な猟犬たちもことごとく撃退される。ロボを捕らえるのは不可能なのだろうか? 考えあぐねたシートンはロボの愛する雌オオカミのブランカを捕獲するという作戦に出る。
この作戦は成功し、ロボはブランカを心配して一日中悲しみの声をあげ続ける。ブランカが死ぬとロボは動揺し、いままでであれば絶対引っかからないような罠に引っかかり、捕らえられてしまう。

ここにおいてシートンはオオカミに人と同じ感情があることに気づき、ロボに同情し、ロボを英雄と称える。

このような物語を日本人的な視点で見ればシートンが悪人に見えてしまうかもしれないが、当時のアメリカ人にとってオオカミは人の生活をおびやかす悪魔のような存在であった。シートンは当時としてごく当たり前の行為をしたにすぎない。

物語終盤において、ロボは悪魔のような敵ではなく、尊敬すべき敵へと変貌する。
そうした価値観の転換は、結果としてアメリカ全体へ広がっていく。

人と動物はどう付き合っていくべきなのか。
これはそのヒントを与えてくれる貴重な作品の一つ。

(文責:道下雄大)


【関連ページ】
Ernest Thompson Seton's Lobo the King of Currumpaw
(狼王ロボについて詳しく解説した英語サイト。狼王ロボの実写写真あり)

amazon

  
タグ:シートン
posted by 道下雄大 at 16:11| Comment(0) | 文学
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: